喫茶店/プル式
その喫茶店には
時計の音がいつも聞こえていた
チクタクという音とは逆に
時代から取り残された様な
ぼやけたオレンジの明かりの店だった
その喫茶店のテーブルには
温泉の記事の切り抜きが
ガラスに挟んであった
いつもいる常連の話は
いつも競馬の話で
マスターはいつも
笑ったり 相槌をうったりしていた
僕はそこでいつも
ぼんやりと外を眺めながら
人を待っていた
待っていたのは誰という訳ではなく
ただ 待っていた
そこは時代から取り残された様な
オレンジ色の喫茶店で
常連はいつも競馬の話をしていた
テーブルには温泉の記事があった
僕は誰かを待っていた
外では少し
雨が降っていた。
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