麦藁帽子のある白と黒のオマージュ/りゅうのあくび
 
恋する人は
誰も知らない場所へと
旅立ってゆく前に
静かに佇んでいる

デッサンをする
画家の前で
描かれる季節に
雨が降ったばかりで
水たまりやら
差し込むひかりやらが
鉛筆のなかで動いていて
陽射しは
小さなフルーツの
缶詰を開けたときに
甘く香るような果汁が
とてもみずみずしく

絵の中で
恋人がかぶる
麦藁帽子の色に
陽射しが
まぶしくあたり
ちょうど
その影には
地上から見上げる
鉛色の積乱雲が
濃い鉛筆で
色を付けられていて
夏に降る
雨の匂いが
そっとしてくる
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