仕掛絵本/Rin K
静脈を流れていった
幾度かの夏がありまして
網膜に棲みついた
((ただそれだけの))海があります
無人の駅舎―――ああ、思い返せば
入り口でした この仕掛け絵本の
?
カラカラカラ
鳴くかざぐるま
哀しいか
愁しいか
―――「父は鉄塔のような人でした」―――
ふうっとため息をついて
あなたは風をつくる
?
だらだらと坂を下って
ぬるい空気は今日も穏やかです
ふるさとの話をしましょう、いや―――あなたには
ここより荒い海があったとだけ
しおはまの町にはいま
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