地の声/草野大悟
この国では
常識という名の良識は
もはや死語となり
それを
語る者は
アウトサイダーを刻印され
片方の唇を軽く歪めたかれらに
まったく相手にされない
そうとも
この国は
もう
終末的様相を呈していることに
誰でもが気付いているのに
その気配さえ微塵も見せずに
取り繕った笑顔が
夕陽のように
沈んで
朝日のように
昇って
時がただ
浪費されてゆく。
ところで
今日
電話があった。
三年ぶりに聞く
携帯からの
妻の声には、
手術前の
青空に舞うヒバリの軽やかさは微塵もなく
削られた右前頭葉の空を
写すように
ただひたすら
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