パブロフのクイックルワイパーウェットシート/土田
史は夜つくられるというのは真実だろうと思う
なぜならぼくの歴史も夜つくられるのだ
高校二年間のミドリとの夜よりも
夢のなかで第三次世界大戦を引き起こすほうが
ぼくにとっては重要なことだった
だからかわいいものたちはすべてベッドの上に
ぼくが鳴らす音が日常をつまらなくしてゆく
ベル涎 ベル涎 ベル涎
ぴかぴかになった七畳半のフローリングを見渡しながら
今日の献立を考えながらロングピースを吸う
近くの寺の十八時の鐘がいつの間にか空腹の合図となっていた
軽い立ちくらみのなか口のなかに唾液がたまり始め
第三次世界大戦の続きをつくろうと
東京二十三区推奨ゴミ収集袋を枕にして
条件反射でぼくはベッドに寝そべった
そう電源さえ入れていない冷蔵庫のなかにはなにもないのだ
ベル涎 ベル涎 ベル涎
かわいいものたちと一緒にベッドの上
薄っぺらいミドリの感触だけがあたまに伝わってこず
二度と同じ夜は訪れないと
クイックルワイパーのウェットシートだけが
ひとりぼっちで乾ききってゆく
07/04/25
戻る 編 削 Point(0)