姉/小原あき
ない顔だった
わたしの知らない世界に住む姉の顔だった
眉毛の半分無くなった顔は
見慣れないけど
わたしの知っている世界に住む姉の顔だった
なんだかほっとした
彼女はわたしの前では
わたしの知っている顔でいてくれる
鏡の中が揺れる
その中に住む姉が
しきりに時間を気にしている
だから、わたしは
持ってきた大量の玉ねぎときゅうりを置いて
じゃ
と玄関を出た
うちに帰って
自分の鏡を見てみた
そこには
畑仕事で少し日焼けをした
素顔のわたしがいた
もう一度
あの時の
知らない姉の顔を思い出してみる
それは
懐かしくもあり
羨ましくもあった
戻る 編 削 Point(20)