姉/小原あき
 
ない顔だった
わたしの知らない世界に住む姉の顔だった
眉毛の半分無くなった顔は
見慣れないけど
わたしの知っている世界に住む姉の顔だった

なんだかほっとした
彼女はわたしの前では
わたしの知っている顔でいてくれる

鏡の中が揺れる
その中に住む姉が
しきりに時間を気にしている

だから、わたしは
持ってきた大量の玉ねぎときゅうりを置いて
じゃ
と玄関を出た

うちに帰って
自分の鏡を見てみた
そこには
畑仕事で少し日焼けをした
素顔のわたしがいた

もう一度
あの時の
知らない姉の顔を思い出してみる
それは
懐かしくもあり
羨ましくもあった




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