「ビスケットボール」/ベンジャミン
 

精一杯の我慢をして
口からこぼれたのは
「平和」
という言葉だった
言葉にすれば簡単なものほど難しい

僕はやっぱり顔を真っ赤にして
吐き出さないようにこらえる
それくらいしかできない

世界はあまりにひろい
そして僕は僕が知る限りのことしか知らない
それだけでも充分すぎるほどの
悲しみだった

こらえていたはずの
涙がぽとりとおちてゆく
それはまだ飲み干していない海になって

やっと
世界がボールみたいにまるいのだと思い出す

つながっている
僕の中で消化できないビスケットたち

数十億の感情の中に
幸福をさがそうとするけど
それは僕が平和にあまえている証拠だから

やっぱりこらえよう

せめて飲み干せない海が
僕の涙とひとしくなるまで
    
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