孤独なひと/恋月 ぴの
同じフロアの同じ間取り
南西向きの小さなワンルーム
好きなひとの去ったベッドに横たわり
ひとりの男の死を想ってみる
駅前のスーパーで買い物を済ませ
近く有料になるとかのレジ袋をぶら下げ
都電荒川線の踏み切りを渡れば
マンション前の道路にはただならぬ人だかり
好奇心の眼差しを押し退けるようにして
正面玄関にたどり着いてみれば
わたしの部屋と同じフロアに消防車の梯子が伸び
数人の消防士がベランダ側の窓を叩き割ろうとしていた
火事にしては煙出ていないし
わたしの部屋に入ろうとエレベーターを降りると
制服姿の警官と私服の刑事が数名
もしかして自殺なのかな
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