羊水記?/土田
?
新宿のアルタ前で見知らぬ人が掛けてくる声のなかには
少女たちの音階がひしめき隠れている
?
原始人の言葉を買い取った文学者は
次の日からマッチを擦って大切な論文が書かれた原稿用紙に火をつけ始めた
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今日アイルランドの少女の歌は
マウスひとつで世界にとどいた
けれども昨日のセルビアの青年の叫び声は
銃弾となって世界に響いた
?
米粒の橋がかかる寝巻き 恐水病者の涙一リットル まだにほわない言葉たちまたは意味不明のいたずら書きの原稿用紙数百枚 腐れゆく蛙と蝶と雲雀と犬と猫と浅蜊と蛸とばくてりあ 一本だけ弦の切れたマンドリン 先の尖った幅の狭い革靴 非理論的およ
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