羊水記?/土田
 
ズルをつくります
ちぎった千の紙のきれはしたちが
いびつなすがたを現すころには
少年はいつも疲れはてて眠ってしまいます
いいえ
少年は知らぬ間に気づいていたのかもしれません
きれいにととのった文字を
きれいな紙に端から並べていっても
そこにものがたりが熔けてしまうと
真四角にはならないことを
そしていつも手のなかにある
最後の紙のきれはしだけが
このことを知っています

?
とおい水平線のむこうがわからは
ときどきとぎばなしが聞こえてきました
ふたつのちがった声でやさしく語られる
そのおとぎばなしの主人公は
どこか少年に似ていました
やがて少年はその主人公の
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