たかが私の/佐々宝砂
草木を集めて焚き付けにして
編んだばかりのセーターを焼きました
晩秋のからかぜが
つんつるてんの頭に寒うございましたが
私はつかのま晴れやかでございました
けれど
育つことを停めた肉体に属していながら
髪は今日も育ちゆきます
剃っても剃っても
朝にはうっすらした翳りとなります
たかが女の髪ひとすぢに
怨念無念こもるなら
セーターに編み込むことすらなされず終わる
この毎朝の翳りには
いかなる念がこもることかと
おののく方もおありでしょうが
つまるところそれは
たかが私の髪でございます
私の髪 私の念でございます
地上の誰に宛てたものでない
天の誰の汚れをぬぐうこともない
たかが私の
(2002)
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