氷喰症/藤原有絵
 

水飴を売る屋台の男から
杏を巻いた水飴の棒を買う

透明なのに
氷より溶けるのが遅いんだよ
早く杏に届きたくて
でも長く水飴を口の中に入れていたくて

母がネバネバしたものを
服につけて帰ると
すごく怒るので

慎重に口を動かす


タネを水飴で巻いた棒を
たくさん並べられた
大きく暑い氷の板を見て
それを食べたいとは思わないから

僕は
氷喰症ではないと思った

うすく杏の味を感じる頃
もう口の中が甘ったるい

でも
味がある方が好きだから

僕は
やっぱり違うなと思った






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