氷喰症/藤原有絵
 
うだるような夏休みの夜
水を求めるように
冷凍庫から氷をとり
口に入れる

がりがり
噛み砕いたり

飴玉のように
ゆっくり溶かしたり

氷は40度に満たない
僕の身体にすぐ溶け消えた

何気なくもう一つ

暗い台所で
冷凍庫のひっそりした光や
足下を滑って逃げる冷気が

気持ちがよくて

何気なくもう一つ


ある日母が氷を食べる僕に
「あなた、氷喰症なんじゃないの?」
と 眉をひそめた


大丈夫なの?


意味が分からなかった

登校日に先生に聞いたら
「心の癖の一つ」
と 教えてくれた


児童公園の前で

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