氷喰症/藤原有絵
うだるような夏休みの夜
水を求めるように
冷凍庫から氷をとり
口に入れる
がりがり
噛み砕いたり
飴玉のように
ゆっくり溶かしたり
氷は40度に満たない
僕の身体にすぐ溶け消えた
何気なくもう一つ
暗い台所で
冷凍庫のひっそりした光や
足下を滑って逃げる冷気が
気持ちがよくて
何気なくもう一つ
ある日母が氷を食べる僕に
「あなた、氷喰症なんじゃないの?」
と 眉をひそめた
大丈夫なの?
意味が分からなかった
登校日に先生に聞いたら
「心の癖の一つ」
と 教えてくれた
児童公園の前で
水
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)