井戸/霜天
 
覗き込むと
少年時代だった
手頃な石を落としてみても
いつまでも帰着しない
頭上では飛行機雲と交差する記憶
不意に飛んできた雲から雨粒が落ちていくと
からーん、からんと
遠くで跳ね返る音がした
落ちていく暗闇
行き先はどこだろう
僕は知らないから
右足に聞いてくれ


覚えたての言い訳の情けなさが
いつまでも張り付いてしょうがない
濡れたシャツを脱ぎ捨てて
落としてみると
ことり

帰着する音がした


覗き込むと
少年時代だった
ただいま、が
吸い込まれていく
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