青いひかり /前田ふむふむ
のぼると、素足の、わたしの胸を透かして、
燃えるような季節外れの黄砂が、海の上に砂漠を描き始める。
うすい煙りのなかから甦る、薄化粧の書架の眺望。
鋼鉄の義足を引き摺って、
オアシスを網の目のように繋いだ風の青年も。
砂の上のみずをもとめて、興っては朽ち果てた、
ロプノールの花の夢も。
駱駝を草原に放って、空にとけていった牧童も。
わたしのなかで咲いている少年の瞳のなかで、
風船のように膨らんだ。
満ち足りていた午後―――。
海の上には、イスが向かい合って置かれている。
誰もいない冷たさを抱いた、
テーブルの上には、一輪の花がある。
淡いひかりが差し込み、レースのカーテンが揺れて、
大人びた静寂を眺めると、
ようやく、青い空が見えてくる。
心電図の波形のような空だ。
波は、不安定なリズムを刻んで、
夕暮れに飛び立つ、一羽の痩せた鳥を見ている。
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