ふくろうと錦鯉/小原あき
靴箱の上にある
木彫りのふくろうは毎晩
わたしの前で目を光らせる
夫は気づかなかった
それはわたしの幻想かもしれないし
夫の現実逃避かもしれない
靴箱の上の定位置に
じっと座って
少しずつ呼吸している
あの呼吸の中には
わたしの中にある
日常の様々な思いが
少しずつ含まれていると
靴箱の横にある
郵便受けのダイレクトメールを広げながら
確信した
その晩は違っていた
木彫りのふくろうが
売ってくれと言ったのかもしれないし
わたしが
売りに行かなければならないと思ったのかもしれない
木彫りのふくろうを売りに行く朝
それは何かの儀式のよ
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