ウエハース島の思い出 5 〜シュトゥルム・ウント・ドラング〜/よだかいちぞう
って出で行く時
オキシドドール博士の霊がこう云った
「冷蔵庫の中の死体が腐乱して
臭いを発するのは
まだまだ先だから
もう少し
君たちは物語を続けなさい」
アルルコールは
呼び鈴を鳴らした
トレドさんは出て来ない
かまわずアルルコールはドアを開け
部屋の中に入って行った
トレドさんが首を吊っていた
アルルコールはもう慣れた光景のように
それを無視して
視線を紫芋の入っている
大きな袋に向け
中に入ってる紫芋に齧り付いた
紫芋を食べてるときは誰でも安定するものだ
アルルコールはお腹に入るだけの
紫芋を何も考えずに
紫芋を食べることだけに頭の中を一つにさせて
ほんとうにたくさんの量の紫芋を食べた
アルルコールの思考は止まった
それはもうリタのことを思うアルルコールではなかった
葉っぱを美味しいそうに食べる芋虫と変わりがなかった
トレドさんの遺書にはこう書かれていた
「アルルとリタ
君たちは存在する
ぼくたちに夢をみせてくれて
ありがとう」
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