遠い名前/木立 悟
双つの花
遠い鏡の前の影
目を閉じ 何かを言いかける
双つなのか ひとつなのか
空の上の上の音
集まり来る曇を見る
道が交わるところで目を閉じ
窓のかたちの白い火を見る
肉と骨の隙間の花
咲いては散り 咲いては散る
目を閉じ つもる
残らず 消える
道はしっとり午後になり
石は過ぎるすべてに鳴る
ひとつの滴のなかで目を閉じ
空は一枚の硝子になる
傷の雨
粒の街
離れる水の音に目を閉じ
まぶたに触れるかたちを見る
夜になり 朝になり
鏡は花に覆われている
咲いては散る痛みに目を閉じ
影の名前を書きかけては消す
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