ふくろうと胡蝶蘭/小原あき
 
女を見ると
それはとても美しい蝶になって
飛んで行ってしまった
しばらく見とれていたが
我にかえって靴箱の上を見ると
ふくろうが眠っていた
おい
と声をかけたけど
ぴくりとも反応しなかった
よくよく見ると
それは木彫りで
だけど、胸の辺りが
膨らんだり萎んだりしていた

この出来事を
私と一緒に胡蝶蘭を大切にしていた
夫に言うべきか迷った
しかし、胡蝶蘭はもうないのだから
言わないわけにはいかないだろう
だから、せめて
私はふくろうを売りに行く先で
決して蝶にはならないから、と
ちゃんと伝えておこうと考えていた





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