村長/吉田ぐんじょう
蝉の抜け殻を
村で一番集めていた村長が死んだ
彼の亡骸は
蝉の抜け殻に埋められるようにして
荼毘に付された
それがみんな燃え終わる前に
新しい村長がやって来た
新しい村長は口ひげを生やした
なんとなく胡散臭い男の人で
笑い顔なんか
ニスを塗ったみたいにぴかぴかしていた
村長は煙の立っている焼き窯の前で
ぴしっと気をつけをしたまま
村の人たちみんなに向かって
命を大事にしましょう
と言った
それが就任の挨拶だった
新しい村長はなんとなく信用ならなくて
蝉の抜け殻も集めないし
何より外車になんか乗っている
わたしも含めて村人たちは
もうみんな一斉にひそ
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