メタボなひと/恋月 ぴの
 
一念発起でもしたのか
寝ぼけ眼をこすりながらも
真新しいランニングシューズに足を通す

ちょっと昔だったら
恰幅が良いともてはやされた下腹を揺すりながら
近所の公園に出かけていった

そんなに暴飲暴食している訳じゃないし
肥満過ぎるって感じはしないけど

ある種の脅迫観念ってことかな

痩せなければ失格者の烙印を押されてしまう
そんな懸念があなたの背中を追い立てる

それよりも
こころのメタボを何とかしたいよね
ぷよぷよになった感性では
捉えられないことがある

すっきりさせようよ

まずはパソコンのスイッチを落として
窓の向うに耳を澄ませてみる

何か聞こえてきたのかな

お隣りさんの痴話喧嘩じゃ修行足らなくて

聞こえてきたでしょ

ほら







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