偶像/草野春心
 


  その街につけられた百個目の名前



  暮れてゆく暮らしの中に
  現われる名もなき女神
  笑い泣く人々の叫び声が
  彼女の臓物を貪り食う



  女神は喋らない
  潮風がその皮膚を剥いでも
  そして偶像が爆弾になり
  生活の上空で破裂する



  詰めものは火薬ではなく
  たくさんの子どもたち
  無数の幼い狂気が
  言葉もなく言葉を焼いてゆく



  息を呑むほどの静けさの水面で
  だれも知らない……
  なにもかもがすでに終わってしまっていることを



  その街につけられた百一個目の名前


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