ノート(雨の日の里)/木立 悟
 



朝の頭は
子蜘蛛の巣だらけ
顔はいたずら描きだらけ
つるりと洗って家を出る


雨で合羽で自転車で
前しか見えない馬車馬の道
そばを小さな合羽の群れが
わいわい言ってついてくる


曇を分けるひとすじの汽笛が
切れ切れに陽をひらいては
鉄の影を地にひらめかせ
雨を率いて去ってゆく


地の水から地の水へ
光は巨きくすぎてゆく
手のひらにひとつ遊ぶ音
やがてくちびるに触れる音


たたんだ合羽の翼の後ろ
見えぬ尾の群れ唱の群れ
老いた車輪の轍の上を
ゆらめきさざめき追ってゆく












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