ニム・チンプスキーによるアメリカン・サインランゲージ入門/海里
 
耳があって口があれば音声言語だ
目があって手があれば手話言語だ
鼻があって口があって
出し入れ自由な汗か何かがあれば
味覚と臭覚の言語ができていたかもしれない
二重文節性の生産性を犠牲にしても
複雑なニュアンスの表現などには向くだろう
触覚については文字でよければ点字もあるしね

チョムスキーにあやかって名づけられたチンパンジーよ
君、チンプスキーよ
我は日本語話者だからといって君をチンプだとは思わない
けれども君はチンパンだ
いかなる単語や文を
どれほど覚え込まされてもチンパンはチンパンだ
ヒトと君たちとの間にどんなにか愛情や
コミュニケーションが成り立っていたとしても
クレオールのように生まれてきたヒトの手話とは違う
それは言語ではない

それでは君、
チンパンの発話の数々が言語ではないとするなら
言語とは何か
ヒトが今ヒトにしか見出せないでいる言語とは何か
それは詩を生み出しうるものだよ
嘘をつくことができるということだ
自分たちの楽しみのために
自分たちの悲しみのために
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