小詩集 別の国/嘉村奈緒
 



シュガー、あたしの住んでいる国は
とてもとても寒くて
湯気がそこここで立ち上る景色が一番
安心できるところ
靴を脱ぎ捨てることなんて造作ないこと
けれどもあたしたちは誰もしない
雪を踏みしめると土の鳴く音がする
それも愛せること
あたしたちの名前はとても薄くて割れやすいけれど
それだって暖かく溶けるのだから
恵まれているって、そう思うこともできるの





*






愛してた女に振られた
トランク一つで列車に飛び乗った
傷心の旅だぜ
探しちゃいけないんだぜ
傷ついたら森だ
鬱蒼とした森だ
しけた緑に飛び込むんだ
誰にも邪
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