せん/れつら
 
きりつめてしまえば
ボウルにいっぱいなのだった
歩んできた家路は
ずっといっぽんみちだったのに
思い出す道草の
切れ端で指を傷める

なんども振り返っては
細々と撒いてきたパン屑を確かめながら
手に残ったひとかけの糧を
食べるか
砕いて、また、歩くか
まぶたの裏でめだまをくるくるさしているあいだに
また粉々にしてしまっているから
こぼさないように、歩く
こぼさないように歩くとすこし漏れ落ちるから
ちょうどいいのだ
それくらいで

森を抜けると細く雨
数すくない目印が土にかえり
もう、戻れないんじゃないかと膝が鳴る
その音は通り過ぎた道に跳ね木々にこだまし
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