東京に旅行に行きました/高島津諦
 
発車より八分早くついたのは期待じゃなくて不安のせいで


高速をひた走るバスに何もかも異化されていく私を残して


見たことのない看板はわたくしを歓迎してるか分からず怖い


東京に入ったときのワクワクを押さえ込もうと唇噛んだ


どこなのか分からない場所を運ばれるAMラジオをタイトロープに


首都高の立体交差を走ってる落ちることだけ考えている


隙間なくざわめいている東京の歌を上手に聞き取れずいる


日常を遠く離れた場所なのに借り物みたいな感想ばかり


お金を使うたび罪悪感が寄ってきてお土産ひとつ買えないでいる


日本の中心にきても道端に中心なんて落ちてなかった
戻る   Point(2)