そんな夜/戒途
 
全てが死んでしまったように
静かなこんな夜は音楽を聞こう。
のびのびになったカセットテープか
溝が擦り切れそうなレコードに入った音楽を聞こう。
出来れば音源の奏者はもう死んでいたほうがいい
それもそいつが人間として朽ちて、
記録時期もそいつの終わりに近い。
そんな音源がいい。
そいつの音は人間から遠いはずだ。
悪魔の音、天使の音、神の音。
おそらくどれでもない。
ただ、人間の音ではないはずだ。
だから、そんな音源がいい。

終末の音色に心を共鳴させよう。
そいつの声が聞こえるだろう。
聞き取ろう。そいつの、そいつにしか理解できない感情を。
感じ取れたりするんだ。そんな夜は。
ノータリン、パープリンの俺たちが、
一生かけても感じられないような、
そんなものが感じられたりするんだ。
全てが死んでしまったような夜だけは。
戻る   Point(1)