飲食店の席で/ブライアン
わせるにはあまり目立ちすぎるのはよくない。彼女はペンと紙を取り出す。ビールを手元から離す。腕時計型携帯電話のイメージを書き始める。三通りくらい絵を描いて、やめた。彼女は自分で書いた腕時計型携帯電話を見つめる。兄の見ていた、戦隊もののヒーローが持っていたものと似ていた。彼女は時計を見る。約束から二十分は遅れている。オリジナル、といっても、すでにあるものからしか、人は何かを作り出すことはできない。腕時計ではなくとも。それがコップであったり、家であったりしても。大航海時代の新世界と同じだった。新世界などはどこにもない。新世界と思われた大地には、すでに何億年という昔から人々の足跡がつけられている。
三十分遅れで予約した店に着いた。店員は苛立つような声で、いらっしゃいませ、と言う。席に案内される。友人と顔を見合わせた。やられたな、と彼は言った。彼女はさらに上手だった。それから、彼女が来るまで十分ほど待たなければならなかった。待つことを考えなければならなかったのは、彼女ではなかった。
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