檻の中の舞踏曲/AKiHiCo
 
悲しみに落ちてゆく
ご主人様を待つ為の時間は
あまりにも長く長く
孤独な世界に傷が増えて

手首に貴方の標を
――お願い、もう独りは辛いの

首筋に当てる冷たさで
生きていると言い聞かせ
檻の中で何度も頷く
鍵が掛かっている

この中で踊ればいい
独りきりの舞踏曲
高らかに歌って笑う
奇声にも似た泣き声で
――誰かお願いだから、助けてよ

楽園を騙る檻の中で微笑んで
そこの正体を知る
ご主人様の望んだ世界は
悲しみに染まりきる前

『繋がれた鎖、悲しみの分だけ重くなる』
ここからは逃げられない
騒ぐなと口を抑えられ
永遠の証の環が鋭く痛み出す
次第に弱り、抗いをやめた

振り翳した刃を降ろせばいい
私、きっと解放される
――嗚呼、ご主人様
どうして変わってしまったの――

後に響くは苦しみの半狂乱の笑い声
その女は床に倒れて微笑
『閉ざされた檻の中に自己はない』
暖かい世界へ還りたくて

――おかえりなさい


戻る   Point(1)