百物語/
北村 守通
影が一人増えた
灯された
蝋燭が役目を終え
また
一人影が増えた
重い空気が
脂汗を誘う
冷たい空気の下では
音の伝導率も高い
影が座り込む
行儀よく
影が笑う
笑いかける
席を譲りあいながら
意外にも
気を使いあいながら
影は増える
一人
また一人と
下がってゆく室温と共に
振り向かぬ方がよい
目を合わさぬ方がよい
夜明けは近い
夜明けは近いはずだ
戻る
編
削
Point
(3)