猫の記憶/ホロウ・シカエルボク
 





つ、たん、とわずかなタップダンス、軒先を転がるようなリズムがして

時のながれをひとあしおいこして行く


あのひとは、いまごろ猫だろう、思いのほか自由な四肢で世界を掻いて

いずれかの路地裏へ、気取られず走りさる

うつくしい
流水のような毛並みを面影と呼ぼう


きっと穏やかな陽だまりの日には
ぼんやりと思い出すのだ

いつも、さりげなく身にまとっていたかすかな香りや

不文律を味方につけたような櫛の使い方

朝のうちスイッチを入れたままの
小さなラジオにハミングする口角

少し冷めすぎるまで待ってから飲みほす紅茶には
必ずセ
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