猫の記憶/ホロウ・シカエルボク
つ、たん、とわずかなタップダンス、軒先を転がるようなリズムがして
時のながれをひとあしおいこして行く
あのひとは、いまごろ猫だろう、思いのほか自由な四肢で世界を掻いて
いずれかの路地裏へ、気取られず走りさる
うつくしい
流水のような毛並みを面影と呼ぼう
きっと穏やかな陽だまりの日には
ぼんやりと思い出すのだ
いつも、さりげなく身にまとっていたかすかな香りや
不文律を味方につけたような櫛の使い方
朝のうちスイッチを入れたままの
小さなラジオにハミングする口角
少し冷めすぎるまで待ってから飲みほす紅茶には
必ずセ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)