支えられるひと/恋月 ぴの
 
天涯孤独だからさ…
それは、あなたの口ぐせ

帰るべき家があって
待っていてくれるひともいる

それなのにどうしてそんなことを言うのだろう

こころの空白を満たそうと
終わりの無い旅を続けているのか

愛するひとに支えられていることを
忘れてはいないはずなのに

静まり返った食卓に並ぶ料理には目もくれず
吸い指しの煙草に火をつけた

誰ひとり孤独に耐えられないくせして
孤独に焦がれ
破滅の時を誘い込むかのように

支えるひと
支えられるひと
何処までも擦れ違ったまま

愛するひとの待つ寝室のドアに手をかけようとして
あなたは
小さく首を横に振り
六月の雨に濡れる夜の街へと消えていった




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