銀色の予感/横山亜希子
 
この日がいつかくることはずっと前から予測していた
銀色の予感
君の「さよなら」と言って振った手が
遠ざかっていくことを
目の前に濃紅色の幕が下がった刹那
背筋がぞくっとした
私の目は見る事を忘れ
私の口は食べることをも記憶していないようだった
春は万物を産み育み
冬は万物を覆い隠す
季節の移り変わりや月の満ち欠けも
私の身体に何の影響もおよぼさない
生きているのに生きていない
見えているのに見えていない
人はどうして人を愛するのか
恋人がいつかはオオカミに変わるときがくることを
知りながらも
人は人を求め 歴史が生まれてゆく


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