公園のウルトラマン/辻野克己
 

誰かが悲しい思いを一生背負うことになる
ぼくは立ち上がらずにはいられない
ぼくは変身しなくてはならない
しかし、ぼくは、ぼくは、
しかし、日本にはスーパーマンがいない
ウルトラマンは誰に助けを求めればよいのだろうか
ウルトラマンには、受話器の音が空しく響いた

またあの子供たちの声が聞こえる
ウルトラマンは声をあげる
地球の誰にもわからない声だ
ウルトラマンは泣いているのかもしれない
そうだとしても誰にもわからないことが救いだった

ウルトラマンはスーツのポケットから
携帯電話を取り出して、固く握りしめた
そして、公園のベンチを壊さないように
ダンボールのなかの友人たちを起こさないように
ウルトラマンは、そっと、静かに変身をした

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