羽虫/生田
えてくる。飲み込まれていく羽虫は抗わない。
羽虫と私との違いを考える。午前四時、撒きすぎた殺虫剤が目に沁みる。羽虫は涙を流すのだろうか、汗腺はあるのだろうか。一時に廃棄になった弁当を電子レンジに放り込んだ私と羽虫の間に連続性はなかった。お互い、断絶した点であった。しかし、私は羽虫を認めたが、羽虫が私を認めたかは定かではない。人でいえば、致死性の毒ガスを用いた無差別殺人に出くわしたようなものか、とゴミを出しに行く途中、さっき落とした羽虫を掃いていなかったことに気づいた。片付けねばならない、店員として。
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