螢棲む暗闇に/たりぽん(大理 奔)
 
さあいよいよ
螢の季節が近づいて
探し始めるのです
はかなく綺麗なものを
風景に重ねたいと
螢を狩る人が
暗闇にうごめくのです

もうそっとしておきませんか
いのちの営みの輝きは
彼らだけのもの
そして、誰もが持ちうるもの

賛歌、さんかはいらないのです
ほしいのはささやかな温もり
いえ、
星に紛れてしまうほどの
ほのかな輝き

   わたしが紛れるべきは
   渓流でしょう
   冷たく、体液のように
   さわさわと流れているでは
   ありませんか

さあいよいよ
螢の季節が近づいて
探し始めるのです
辛く悲しいことの弔いに
儚さを重ねたいと
螢を狩る人が
まっくらやみにうごめくのです



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