街の鳥葬/しろう
 
コンクリートの地面の穴から断続的に棒状の水を宙に吹き上げる公園。
今の俺には水は必要なかったから、ブランコを揺らしていた。
空中に放り出されそうになるのがこんなにも怖いものだとは、子供の頃はまだ知らなかった。
この街には不似合いな香りでマゼンタのポーチュラカが咲き乱れている。
どこかのバーから流れてくるジャズピアノの間に、遠く電車の車輪の音が挟まった。
通勤車内では心拍を締め付けるような振動なのに、心持ち落ち着くような気がするのが可笑しかった。
「As time goes by」を弾いてくれないかと願ったが、「Mack the knife」みたいな陽気な曲ばかりだった。


彼女
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