職工/おるふぇ
 


楔を打つ毎刻む毎
反響する音、
明鐘の 透化した 輝き


こつっ こつっ


規則的に 空気の壁に跳ね返って
その度毎に 真新しく
ヤスリを持つ手から
汗が飛び散る


こつっ こつっ こつっ


見たこともない表情の
木製人体
魂に入り込み
深く染み渡れ
この鼓動の生々しき音と熱


ぎとぎとした世界に
たった一体の こけし
神の目をして


こつっ こつっ




作業は翌日にまたがる
しなる腕は
失敗を重ね、廃棄してきた
無数の過去作や
棚に並ぶ幾奥の修羅の目をしたこけしの
集大成


光と 影 追憶に瞬く
鬼の涙は
宇宙の一塵に消ゆ


こつっ こつっ



その音が鳴り止む頃
こけし職人の鼓動は止む
精や魂も尽きて
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