ランナーは笑う/音阿弥花三郎
スポーツのような真昼。
停止すべき者へ慰みを贈った
健康的な半裸の男(声はない)。
シンナーの臭いは坂の途中で会う女。
足をぬぐう女。
育児書を引き裂く女。
過去の頂点を崩す女。
それらすべてを筋肉質の腕で抱く
ランナーたち。
抱いて笑う走者たち。
笑いは乾いた地に水をまく。
濡れたフィールドをまたいではいけないのか!
ランナーの
口の端の
白い唾液。
昼は知らぬ間に暮れる。
スポーツのような深夜。
二人の汗の混合液。
笑いながらランナーは
核めざして滑り落ちてゆく。
夜は
奇抜な平面を持った夜は
彼の笑いの中で成長し
長い足の関節を鳴らす。
暗く狭い箱の中に
ランナーの小麦色の臀部が盛り上がる。
夜は明けようもないのだ。
戻る 編 削 Point(1)