剥製を抱く/佳代子
私は父の剥製を抱く
怒りの集積が父を剥製にした
不動明王の縄になって縛りたいものが
「偽りの手」かもしれない
23年間の沈黙が破られて
見えてきたものは父の死の真実だ
無知で作られた平穏という架空世界に
生きてきた私はいったい何だったんだろう
気づかないまま過去も忘れ去っていく
母の方が今は幸せかもしれないが
生まれた意味も知らず異世界へ
送り出された兄達もいる
「神の手」を信じた母の言葉を
風のように聞きながしていた私は何と愚かだったんだろう
貝殻にもならぬ耳だ!
愛する者達を次々と失っても
憤る事知らぬまま
悲しみを抱いているのだ
ただ悲しみを抱いているのだ 母は
それも今では風化して・・・
私は剥製を抱く
だからこそ私は剥製を抱く
父の真実を忘れたくないから
神の手を信じる事からのスタートは
もう私にはない!
私の中で生きる父の遺伝子
神にも見えない闇の遺伝子
私が「病み」に光を入れる
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