「 ぼくはふたにぎり、でもすこし。 」/PULL.
一。
ぼくは二握り、でも右隣の席のヒダカくんは一握りと半分。だけど膨張する前のぼくは小指と同じで、ヒダカくんは人差し指と同じぐらい、おっきいのはイイコトだと左隣のミギタくんは言うけれど、ミギタくんのは左手の中指よりもちょっと小さくてムケてない、ムケているのはクラスでぼくとムナカタくんだけで、ムナカタくんはムケカタくんと呼ばれていたのに先週転校してしまって、ムケているのはぼくひとり、ムケるのにはきっと理由があるとムナカタくんはぼくに言っていたけれど、ムナカタくんが転校した理由はムケたムケカタくんだったからで、だからぼくはムケた皮を伸ばして被せて、変装している。
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