理解の彼方/風船6号
そうそう遠くへいけるものではない
自分に言い聞かせる
過去や未来に関心はないけれど
たゆまず足を運んでしまう場所は未来で
死ぬまでこころ寄せてしまうのは過去で
そう思案しているうちにだせいの未来へたどり着いた
くまなく周りを見ても五分前となにも変わらない俺の部屋だった
未来に失望して、五分前の過去を想う
扉を閉める
それでも、密閉されたこころは止め処なく未来へ進んで
潮のみちひきを憂う
現実を、憂う
五分前を。
決して自分を卑下しないように、そうして未来や過去へ赴く
生まれた瞬間、落ちぬようにとしがみついた世界の枠組みが
俺に「ハロー」とつぶやいていたのを思い出した
だいたいの仕組みを理解した頃、右手には愛が、左手には虚無が
握られていた
ひとと手を繋ぐというのは、そういうことなのかも知れない
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