あのポスト ( 2008 )/たりぽん(大理 奔)
ひどく深い山奥に
その百貨店は建っていた
百貨店といっても実際にはよろずやで
それでも、食料品から最新のテレビまで
なんでも売っているのだ
ダムが出来ると
集落のすぐしたまで水面になるという
七十八になる店主は
神社が沈んでしまうと嘆いていた
店ではその神社が描かれた
絵はがきが売られていた
端が少し黄ばんでいる
ふと、故郷の両親のことが気になった
ひどく不安な雲が峰からわき上がって
谷が夕暮れのようにたそがれる
私は絵はがきを買い求めると
簡単でありきたりな言葉を書き
故郷の住所と共に
百貨店の入り口にある
赤いポストに投函する
カサカサと音が
[次のページ]
戻る 編 削 Point(18)