てのひらの街/山中 烏流
かった
それなのに
誰かに罵られるような
そんな、感覚がした
・なかゆび区
ひとの目と、口と
その他にあげるとしたら
何があるだろう
その他に、何が
凶器になるだろう
そう話した誰かの
指先が、既に
・くすりゆび域
白い鳩が飛ぶ
それを、幸せと呼ぶ
ここの外れには
小さな教会があった
こじんまりとした夫婦が
細々と暮らしていた
幸せについて
話してみようとしたら
夫婦は揃って
幸せなんて知らない、と
言った
遠くに忘れた約束
それもまた、幸せだと
・こゆび市
見えないようにして
母親は、いつでも
子供の腕を引く
本当は
端だけが触れていて
その他に於いては
何も無いことを
お互いに知らないままで
ほら、また
分かったふりをして
擦れ違った
戻る 編 削 Point(3)