あなたという風景/佐野権太
 
あなたはいつも
わたしの
開かれた窓でした
そこにはいつも
新鮮な空気が流れていて
清潔な水色の空とつながっている

たとえばそれは
岬の草はらの淡いスケッチで
たとえばそれは
ガーゼで絞ったシトラスの朝で

頬杖をつくときも
指先を浸せば
瑞々しい
あなたの世界とつながって
それだけで
あんしんしていられた

抱きつくことも
抱きしめられることも
けして
なかったけれど

光のつぶで縁取られた
あなたが手をふって
笑っている

あなたの
手のひらから生まれた子供たちが
未来、未来、と叫んでいる
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