熱海の墓標/あすくれかおす
 

泥濘に沈む感覚だけ伝わってくる
「ふたご座、もうすぐ30代。九州出身、女性です。がんばります」
私は小さな声で 
古くさい宣誓をしてみるがなんとも
まるで抑揚のないニュースのようだ




私の悩める世界はたぶん
全ての悩める世界の代弁
退屈の後ろ足をひきずりながら
そんなふうに嘘か本当か
分からないことばかり考えてしまう






私はひたすら歩いてる
どんどんどんどん歩いてる
友だちが豆粒になって帰りを待ってる
だけど呼んでる手招きが 
さよならのジェスチャに見えている





身勝手だが聞き分けのよい
私の足は踵を返して
もういちど元の方向へ
私の心は

私の心はひとつ小石を拾って海に投げ

これは春雨への供物なのです と

わざわざ理由を添えてから
もういちど元の方向へ
どうにかなる私の方向へ




             
                
                


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