まぶたの海/唐草フウ
ことのない
ちいさな海に
さざれ波は少しだけ
ゆれて見つめていました
(3)
海はねむりにつきたかったのだけど
眠ることができずにいました
ああ、月でさえ動いてゆくのに
みうごきが取れないや
海はとうとう泣いてしまいました
すると
にんげんには聞こえない声が
ヒトヒトと起き上がるようにして
(―さかなの群れ、大群!)
海のはたらきを手伝おうとしました
少しだけやわらいだ海に
小雨がふってきて
眠りにつかない仲間を
見つけたようでなぜか安らかになりました
戻る 編 削 Point(10)