無題22(敬具)/ねろ
 
名も知らない鳥が空を切り裂いて飛んでいく
(あ、鳥だ)
隣に立っている人が言う
声の無い声

(本当だ、でもあの鳥が何と言うのか私は知らない)
想像空間上の問答

そうだったらロマンチックだわ
とても抽象的な空気感ね

ホームの下の錆びてレンガ色の濃くなった線路
その脇のあやふやな形をした水溜り

(あれの輪郭、女の人の裸みたい)
(まるでおどけて踊ってるわ お腹が出ていて私に似ている)

隣の人は私の目線と同じ処をじっと見ている

(あそこの水溜りはマチスみたいだな)
(人が踊っている絵のやつ)

(踊っている人って性欲に狂っているように見えるな)

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