潰れた酒屋の勝手口をノックしているハスキー・ボイスの若い女/ホロウ・シカエルボク
 






どこかのアパルトメントの
窓から下手な鼻歌
握り潰されたマルボロの空箱が甲虫のように転がる
排水溝からささやかなモルツの香り、だけどそれは
はなはだ飲みすぎた誰かの
小便かもしれない



20年も前から
シャッターを下ろしたままになっている酒屋の
勝手口のドアを女はノックしていた
目が合うと、彼女は
「はしたない姿を見せたわね」
とでも、言いたそうにはにかみながら
「お酒持ってない?」

つぶやいた
まだ若いのに
物乞いに慣れてる感じだ


持ってない、と俺が答えると
彼女は背を向けて
左手でバイバイの挨拶をした
そこの
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